鳥インフルエンザ

4月19日、国立感染症研究所(感染研)は中国で鳥インフルエンザがウイルス(H7N9型)の感染が広がっている問題について、初めてのリスク評価を公表した。

 

 それによると「同一家族内で複数の患者が発生し、限定的な人から人への感染が起きている可能性もあり、今回のウイルスは人への適応性を高めていると思われる。パンデミック(世界的大流行)を引起こす可能性は否定できない」と警告した。

 

また、同日、世界保健機関(WHO)中国事務所は記者会見でウイルスの分析検査を公表。「これまでの検査では感染者の大半は野鳥との接触歴が報告されておらず、症状から見て家禽類を介して感染したとみられるが、人から人へ感染すると(疫学的な確証はまだ得られず)証明されたわけではない」と述べたが、その可能性を否定したわけでもない。

 

【空白の1ヶ月】

 

 初の感染者である上海市内の男性(87)が発症したのは2月19日。彼は3月4日になくなっているが、それが公表されたのは3月31日。死亡から1ヶ月近く経ってからの発表であった。

この空白の1ヶ月。

ウイルス感染は確実に広がった。

中国では4月4日~6日までは「清明節」に伴う3連休。この間約100万人が上海駅を利用するなど中国各地は多くの人でごった返し、中国人の観光客や邦人の一時帰国などで日本への渡航者は激増した。外務省は「清明節による人の移動で感染が拡大する恐れがある」と注意を喚起していたが、はたして、中国当局が対策に乗り出した4月上旬、発症例はすでに30件を超え、4月20日現在では中国全体の感染者は102人(死者20人)に達し、感染地域も上海、北京の2市と江蘇、浙江、河南、安徽の4省と拡大してきている。

 

【パンデミックは起きるのか?】

 

 つい最近のパンデミックの例(09年H1N1型が4月にメキシコで発生、2週間で30カ国に広がった)と比較して今回のH7N9型も限定的に人から人へ感染してるかもしれないが、最初の感染者が確認されてからの時間と感染者数を考えるとパンデミックを心配するような状況ではないと指摘する学者もいる。

しかし、今回のウイルスは過去に人への感染例がなく、免疫を持つ人は誰もいない。ウイルスが人から人へ感染する能力を持つと大流行する恐れは否定できない。

 

【過去の主なパンデミックの例】

 

1918年:スペインインフルエンザ

感染者6億人・死者4000万人(うち、日本人38万人)

 

1957年:アジアインフルエンザ

死者200万人(うち、日本人5,700人)

 

1968年:香港インフルエンザ

死者100万人(うち、日本人2,000人)など

 

 

【厚労省のシュミレーション】

 

 厚労省はすでに、2008年、日本で新型の強毒性インフルエンザが発生した時のシュミレーションを発表している。

それによると、3200万人が感染し200万人が入院、死者は最大で64万人に達するとしている(日本人口の1/4が感染、死亡率は2%)。

中国では20日現在感染者総数は102人、そのうち死亡者が20人だから死亡率は約20%近くである。死亡率だけで比較すると厚労省のシュミレーションの10倍。今回のインフルエンザウイルスは厚労省の予測する毒性をかなり上回っていると思われる。

 

 今、厚労省は日本での感染者発生に備え、検査態勢の整備を進めている。この10日には感染研は中国疾病対策センターが培養したウイルスを入手。ウイルスの遺伝子情報を基に検査セットを作り全国検疫所16ヵ所、全国74ヵ所にある地方衛生研究所に配布し、ワクチン製造も可能な状態になっている。

 

【ウイルスとは何か】

 

ところで毎年のように現れては我々を不安に陥れるインフルエンザウイルス。ここでインフルエンザウイルスとは何かおさらいをしておこう。

 

【このウイルスの大きさはどのくらいか?】

 

人の細胞:50.0μm・スギ花粉:30.0μm・

結核菌 : 2.0μm・HIV : 0.1μm

同じくインフルエンザウイルス:0.1μm

 

【このウイルスは生物か?】

 

すべての生命体にはDNA(生命体の遺伝情報を記録し、子孫に伝えていく記録体)とRNA(そのDNAの中の遺伝情報を取り出し実際に遺伝通りに働くように役目をするもの)があるが、インフルエンザウイルスにはDNAがある。

 

【自己増殖できるのか?】

 

生物、たとえば細菌は自力で自分の複製を作るが、ウイルスは自力ではできない。他の生物に取り付きその細胞の機能を利用することでしか複製を作れない。これも増殖にあたるが一般的な生物の増殖とは言い難い。

 

【代謝作用はあるか?】

 

代謝作用はない。ウイルスは二重の殻を持ちその中にDNAを包み込んでいるだけで一般的な生物が持つ細胞膜もその構成要素である核やミトコンドリアなどは無く,代謝のための器官もない。呼吸するということも食べるということもない。

 

このように見てくるとウイルスは普通考えられるような生物では無く、生物と非生物の中間に位置する特異な働きを持つ存在としか言い様がない。今日、学会では「ウイルスは生物ではない」というのが共通認識になっている。

 

【生体なければウイルスなし】

 

さらにウイルスの際立った特徴として他の生命体に寄生しないと存続できないという点がある。宿主の存在が絶対必要条件なのだ。それは主として鳥類(鴨、アヒルなど)である。それらの体内にあるウイルスが何らかの条件で遺伝子交換して家禽類(鶏、豚など)に適応(感染)するように進化し、さらに人の体内に取り込まれたウイルスの遺伝子が変異し人に適応し増殖を続け広がっていく。

そして生体を離れればウイルスは存続はできず、短期間のうちに自然と分解していく不思議な存在である。

 

【ウイルスは進化する】

 

現在、多くの種類のウイルスが存在している。ただ、ウイルスは生物と離れては存在できない。それは我々人間を含めたこの動植物界、自然環境が変われば、ウイルスも適応すべく遺伝子を変異させ、進化を続けるということを意味している。

 これは細菌の例だが去年11月、ほとんどの抗菌薬が効かない死亡率50%の新種の多剤耐性菌「OXA48型カルバペネマーゼ産生菌」が日本で初めて確認された。この菌は健康な人に対する感染力は弱く、その大半は院内感染であるが、この菌のようにウイルスも、より強力な性質を持ったものに変化し続けていくと思われる。

 

【タミフル耐性の遺伝子突然変異検出】  

 

先ほど感染研で、入手した新型ウイルスの遺伝子情報を基にワクチン開発が可能となったと述べたが、それが完成するまでには半年はかかる。厚労省は「タミフル」で一応予防可能としていたが、この11日、鳥インフルエンザ感染者の一人から「タミフル」耐性の遺伝子突然変異が検出されたと報告がなされ、現在中国疾病対策センターがH7N9型ウイルスを検証中である。

 なにかと話題になった「タミフル」。

感染したとしても出来うるならば、持てる自然治癒力を高めて対応出来たらと思う。インフルエンザに感染したとしてもそれが直接原因で死亡するということではない。ほとんどが重症化せずに回復する。問題はやはり高齢者や基礎疾患を持つ人など、自然治癒力が低下している人々である。これらの人が感染すると重症化しやすく、多臓器不全など合併症が引き起こされて死に至るといわれている。

 

【自然治癒力を弱めるもの「食」】

 

「医食同源」という言葉があるが、これは今や死語化しつつある。

そのいい例が沖縄県民の平均寿命の下落だろう。先だって日本人の県別平均寿命の発表があった。これまで常に上位を保ち続けていた沖縄県の男性の平均寿命が47都道府県中30位に下落、女性も3位に転落した。この要因は特に40~50代の死亡率が極端に高く平均寿命を縮めたためと言われている。

 この世代は駐留米軍の影響か青少年期からファーストフードやステーキを好み、その結果沖縄の肥満率は42%と全国平均の26%をはるかにしのいでいる。その死亡原因も脳出血、急性心筋梗塞、慢性肝疾患、肝硬変やアルコールによる疾病など生活習慣病による死亡がほとんどで全国平均を大きく上回っている。

まさに「医食同源」ならぬ「病食同源」の様相を呈している。

 さらに現在、我々の日常の食べ物一つとっても食品添加物は氾濫し、遺伝子組み換え食品や安全基準が曖昧な海外からの輸入食品の増加など現在、日本人の体内に取り込まれる食物の質は以前に比べて大きく変質している。

高度情報化社会・・・文明は確かに発展したが、それに伴って我々はより健康になってきただろうか?我々の持つ本来の自然治癒力は高められてきたと言えるだろうか?

それどころか、緩慢に弱められてきたのではないだろうか?

 

 先人の知恵として伝えられてきた「医食同源」

この言葉には「食物には命を育み、治癒力もある」という自然界の大いなる恵に感謝する念が込められている。

自然は時として恐るべき災害をもたらすが、それでも大地を離れては生きていけぬ我々人間の自然に対する偽らざる信頼の念が込められている。

 

 ひるがえって現代、我々は警戒心を持って食材を選ぶ。

汚染されてないか?この食材の製造元輸出国はどこか?

食品添加物は?遺伝子組み換え食品か?

 

「美味しければいいだろう・安ければもっといいだろう・便利ならさらにいいだろう」このような食材選択判断基準では「医食同源」という捉え方など意味をなさない。その結果として、今や、「食」に対する信頼性は喪失し、誰もが心ひそかに「病食同源」というイメージを抱くようになってしまった。

様々な食品添加化合物、遺伝子組み換え食物など非自然物が体内に取り込まれていく日常。

「ただちに影響はない」と言われても不信感は払拭できない。

この不信感はどこから来るのだろうか?それは我々を含め一切の生命体がこの地球に誕生して以来、長い歳月をかけて培ってきた保存本能・自然治癒力の直感的な危険信号ではないだろうか。

我々の持てる自然治癒力は確実に変質し弱められている。

 

「食」を信頼できない社会とは大変不幸だと思う。

 

新型の鳥インフルエンザH7N9型・・・この非生命体が我々人間に問いかけているものは一体何だろうか?

 

 好むと好まざるとにかかわらず、ウイルスと生物は共存関係にある。その共存関係・・・それを包む自然環境を我々人間が劣化させてきたのではないだろうか。それはウイルスレベルから言えば存続危機的な状況をもたらしているのではないだろうか。ウイルスはこの危機的状況に適応すべく遺伝子変異を繰り返し進化する。

そしてより強毒性を持って我々の前に次々と現れる。

その毒性が強ければ強いほどそれは自然環境や生態系環境の劣化を物語るものであり、それは劣化させたきた我々人間に対する逆襲でもあるような気がする。

 

ともあれ、今回の鳥インフルエンザはますます拡大していくと思われる。ワクチンが完成するまでは基本的な予防策を徹底して被害を最小限に抑えるしかない。

 

ウイルスの大きさは0.1μm。

普通のマスクはすり抜けてくるが・・・人から人へと感染する可能性がある以上、

 

できるだけ人ごみは避ける。

外出時はマスクを忘れない。

外出先から戻った時は手洗いとうがいを忘れない。

調理の前後、食事の前、トイレのあとは手洗いを忘れない。

肉類は十分に加熱してから食べる。

 

上記のような予防策を今から励行するしかない。

 

 

【関連情報】

 

2013年5月18日【日本感染症学会タミフル推奨】

 

今月18日、日本感染症学会は鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)の感染者が日本で出た場合は「重症化が懸念される例ではタミフルの服用量や期間を2倍にすることを推奨する」との提言を発表した。提言では「治療の基本は抗インフル薬の早期投与」と強調。飲み薬のタミフルは通常成人の場合は1錠を1日2回、5日間服用。重症化の恐れがある場合は1回2錠、10日間と服用量と機関を増やす指針を示した。点滴薬ラピアクタも有効とし、症状により投与回数を増やすべきだとしている。

 

2013年5月28日【タミフル耐性ウイルス検出】

 

今月28日、イギリス医学誌ランセットに上海公衆衛生臨床センターは中国で拡大したH7N9型鳥インフルエンザの患者2人からタミフルが効かない薬剤耐性ウイルスが検出されたと発表した。これまでも患者から採取したウイルスから薬剤耐性に関わる遺伝子変異が見つかっていたが、タミフルを投与しても効果がなかった患者のウイルスから遺伝子変異が見つかり、薬剤耐性が臨床的に確認された例は初めてという。