遺伝子組み換え作物

  遺伝子組み換え作物やそれを利用した食品の摂取による人体への健康被害、あるいは生態系に対する影響等については専門家のあいだで意見が厳しく対立している。

 

 現在、日本を含め遺伝子組み換えを容認している国々の安全性評価の考え方は「実質的同等性」なら認めるというもの。

これは組み換えられた生物が組み換え前のものと姿、形、主要な成分が同じならば中期的、長期的な毒性検査は行わなくても良いという経済協力開発機構(OECD)が決めた「バイオテクノロジー応用食品の安全性評価基準」に基づいている。

 

 ただこれはあまりにも開発企業寄りなので世界各国から疑問の声が起こり、現在ではバイオテクノロジー特別部会CODEXが設けられ(これは世界保健機構WHOと世界食糧機構FAOによる食品に関する合同機関)、遺伝子組み換え食品の安全性についての議論が始まったばかりである。

 

このような世界的な流れの中で先日、米国で遺伝子組み換え作物について先手を打つように健康被害が疑われる場合も法的に作付を禁止することはできない」法案(モンサント保護法)が成立した。これは健康を害する疑いがあっても遺伝子組み換え作物の作付は法的規制外とするもので、結果的には遺伝子組み換え作物の作付を促進し、その生産中止あるいは販売停止等はその企業の判断に任されるという企業保護の内容になっている。国民の健康は考慮されていない。この法案に反対する市民団体は約25万もの署名を集め法案反対を訴えたがオバマはこの法案に署名した。

 

日本のマスコミはPM「2.5」あるいは新型の鳥インフルエンザなど国境を越えた健康問題は緊急課題として情報を発信、国民にその予防対処法を呼びかけるが、この法案成立の問題性はマスコミにはどのように映るのだろうか?

 

  日本の大豆自給率は約4~5%ほどで、輸入に頼らざるを得ない。そしてその約75~80%は米国からの輸入大豆である。

しかもそのほとんどが遺伝子組み換え大豆である。

 

 現在、全世界で流通している遺伝子組み換え大豆としては米国のモンサント社の除草剤耐性大豆の1品目である。

 このモンサント社はもともと枯れ葉剤や除草剤の会社だったが(その商品ラウンドアップは有名:すべての植物を無差別に根こそぎ枯らしてしまう最強の除草剤)たまたまラウンドアップ生産工場の排水溝で除草剤耐性の微生物を発見。その遺伝子を大豆に組み込むことに成功したのが始まりである。

 (ラウンドアップ耕法というのがある。耕地にこのラウンドアップを撒き、一度すべての植物を枯れさせ取り除き、そのあと遺伝子組み換えでできたラウンドアップ耐性大豆の種子を撒き、そのあと再びラウンドアップを散布するというやり方である。これだと手間ヒマはかからず低コストで大豆の生産ができるが、この遺伝子組み換え大豆の種子はモンサント社からしか買えず、また自家栽培は特許権の侵害となる)

 

 この遺伝子組み換え作物の安全性審査は現在のところ開発企業(輸入者)任せで、申請者の提出した書類審査だけで第三者機関による安全性の試験は無く、また組み換えされた作物の摂取試験もなく、組み込まれたタンパク質の急性毒性の試験はあるが、長期的、慢性的毒性についての試験は免除と甚だ、ずさんな審査となっている。

やはり事故は起きた。1988年、健康食品として販売されていたアミノ酸の一つである「Lートリプトファン」を食べた人が「好酸球増加筋肉痛症候群」という症状を起こし米国を中心に約1600人の被害者を出しそのうち約40人が死亡するという食品公害が発生したのだ。この「Lートリプトファン」製剤は日本の企業が遺伝子組み換えをした細菌に作らせて製品化したもので、予期せぬ2種類のタンパク質が生成されそれがある体質の人に作用した結果だと判明した。

 

 また遺伝子組み換え作物としてBT菌(BTタンパク質)という殺虫毒素を持つバクテリアの遺伝子を組み込んだ殺虫性トウモロコシがある。

米国の大学でこのトウモロコシの花粉の実験を行ったところ害虫以外の蝶の幼虫も死んだと学会で発表された。日本の農水省はこれを受けて花粉中にBTタンパク質を産生する作物についてはこれまでの評価基準を見直し、新基準が設定されるまでは花粉中にBTタンパク質を含む作物の栽培確認は行わないとしたが・・・

TPP条約参加を表明した日本。

「健康被害が疑われる場合でも法的に作付を禁止できない」法案を成立させた米国。条約締結後に日本政府は健康被害の恐れある農産物輸入禁止を米国に要求できるだろうか?

 

 健康被害が疑われる遺伝子組み換え作物(トウモロコシ、大豆等)の取り扱いはどうなるのだろうか?その安全基準は見直されるのだろうか?米国の基準を押し付けられるのだろうか?健康被害が疑われる場合に輸入制限は可能なのか日本は米国に対して「NO」と言えるだろうか? あるいは日本ではタバコのパッケージに「喫煙はガンを誘発する、心筋梗塞の危険性があります」などの表示はあるが、そういう表示が遺伝子組み換え作物や食品に可能なのだろうか? あるいは日本で除草剤耐性作物作付け申請がされた時、それを政府は拒否することはできるのだろうか?     

 

 ヨーロッパにおいては遺伝子組み換え作物やその食品に関して根強い不信感があるせいかほとんど流通しておらず、その規制も厳しいため米国はEUの流通規制を違法としてWTOに提訴するほどである。また、その遺伝子組み換え食品の表示方法も徹底していてスーパーなどに並んでいる全商品はもちろんレストランのメニューまで表示義務が課せられている。日本はそこまでいっていない。

なぜ日本は遺伝子組み換え作物に対して甘いのか?

そうすることで誰が得をしているのか?

 現段階でも中、長期的毒性の検査は行われない遺伝子組み換え作物は流通している。まだ、その危険性は顕在化していないが日本がTPPに参加した瞬間から、健康被害が疑われても遺伝子組み換え作物に対し法的な規制もできなくなる。(それはTPP違反になる)

 

 遺伝子組み換え作物は米国から津波のように押し寄せてくる。

我々消費者は自ら防衛しなければならない。

最終的に遺伝子組み換え食品を選ぶかどうか、その安全性、有用性などは個別に判断するしかない。そのためにも遺伝子組み換え作物の安全性に対するさらに厳しい基準の設置が必要であり、より正確な情報開示が不可欠だと思われるが、 それがなされないならば日本は遺伝子組み換え作物の壮大なる実験場になるであろう。

 

【関連情報】

 

【未承認の遺伝子組み換え小麦・オレゴン州で発見】

モンサント社は遺伝子組み換え作物としてトウモロコシ・大豆・アルファルファを商品化して販売しているが、小麦については米国は認可していなかった。

トウモロコシ・大豆等は主として家畜の餌、これは許せるが・・・しかし、小麦は人が直接食べる!

健康問題を懸念するアメリカの消費者や輸出業者の反発でモンサント社の遺伝子組み換え小麦開発実験の許可は取り消されていた。

それは8年前のこと。

 

その小麦がオレゴン州の農場で見つかった。

アメリカ政府は「事態を深刻に受け止めている」とし、禁止したはずの小麦が何故8年もたって畑で生育しているのか、モンサント社の管理体制に問題がなかったも含めて調査している。事態を受けて農林水産省は5月30日、同州で生産された小麦を、政府の買い入れ入札から当面外すことを決めた。日本は米国から年間約300万トンの小麦を政府が一元的に輸入しており、米国から詳しい情報提供を受けたうえで今後の対応を判断するとしている。

 

 モンサント社の遺伝子組み換え小麦開発実験は2005年に禁止された。が、この小麦が8年間、自然環境の中で確実に生育していたという事実はその他の品種との異種交配がすでに始まり、拡大していることを意味している。「実質的同等性」という基準で遺伝子組み換え作物は認められているがそのルーツは例えばモンサント社の大豆は微生物と植物の異種類の遺伝子の組み換えで作られたもの。非自然作物なのだ。アメリカ政府の「深刻な事態」と言う表明はこの「非自然植物」に生態系のバランスが侵される懸念を表したもの。その恐れは小麦に限らず、遺伝子組み換え作物一般に言えることだと思うが・・・

 

(なお、サンモント社と提携している日本企業は住友化学。

その住友化学の会長は経団連会長の米倉弘昌である)