南海トラフ巨大地震被害想定と福島原発事故の教訓

(南海トラフ巨大地震とは駿河湾から九州沖に延びる浅い海溝「南海トラフ」沿いを震源とするマグニチュード9クラスの巨大地震地帯。これまでの記録によると90~150年間隔でM8クラスの大地震が繰り返し発生している)

 つい最新では1944年12月7日に発生。その規模はM7~8,被災地は北陸、関東、甲信越、東海、近畿、四国地方と広範囲にわたり津波の高さは約6~10m、全半壊した建物は住居、非住居合わせて約9600棟、死者行方不明者は約1200人とされているが詳細は不明である。

当時、日本は戦時下にあり軍部は「戦意高揚を妨げる」と厳しくこの地震情報を統制。「すぐに復旧できる程度の被害」としか国民には知らせなかった。

 

この「南海トラフ」について2013年3月18日、国の中央防災会議の作業部会「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(WC)は南海トラフ巨大地震に伴う経済活動、ライフライン、交通などの被害想定の報告書を発表した。

 

 それによると、揺れや津波、火災等による直接的被害は東日本大震災の約10倍の170兆円、それに伴う生産低下、物流網のマヒなど間接的被害約50兆円、被害総額は220兆円(国家予算の約2倍超)被災する可能性があるのは国民の過半数の6800万人と推計した。作業部会のトップである河田恵昭・関西大教授は「国民の大半がこの災害に巻き込まれるかもしれない。人ごとではないという危機感を持って欲しい」と訴えている。

 

 これを受けて政府は「南海トラフ巨大地震対策特別措置法」、「国土強靭化基本法」などの法案を早期成立させる方針を示し、内閣府の藤山秀章参事官は「不安を煽ることが目的ではない。少しでも地震防災を進めていくための想定なので冷静に受け止めて欲しい」と説明、政府は事前の取り組み次第では大幅に「減災」できると強調している。

 

 しかし、被害総額を約220兆円とするこの報告書には「想定外」として数値化されてない項目がある。

 地震津波による原発事故による影響である。

 この報告書の想定する巨大地震被害地域には茨城県の日本原子力発電の東海第2・静岡県中部電力の浜岡・愛媛県四国電力の伊方の3原子力発電所がある。

 

 昨年7月5日の福島原発事故を検証する国会の事故調査委員会(黒川清委員長)の最終報告書では今回の事故は「自然災害」ではなく、規制当局や東電の「安全対策の意図的な先送り」が招いた「人災である」と断定、安全対策の重要性を強く訴えるものであった。同年8月の中央防災会議の作業部会はそれを受けて「南海トラフ巨大地震が起きた場合、浜岡原発に最大で約19mの高さの津波が襲う可能性がある」と福島原発事故を教訓とし、更なる安全対策を行政にも電力会社にも呼びかける内容となっていたが、今回の報告では「3原発は地震発生と同時に運転停止する、何らかの異常が発生した場合緊急的な対応が必要となる」と述べただけで原発のトラブルによる被害は「想定外」として数値化されていない。

 

 環境省の福島原発事故による放射性物質の除去費用だけでこの11~13年度で約1兆700億円の費用がかかっていると報告されている。福島原発の事故発生以来現在までのその被害総額は数値化されているのだ。福島原発事故の影響が完全に収束するにはどれだけの被害総額かそれを作業部会が算出できないわけはない。

 

「南海トラフ巨大地震」が発生し、最悪の状況として3原発が同時に事故を起こした場合の影響も福島原発事故をモデルとして試算し公表すべきである。それは被害総額220兆円を大幅に超え、壊滅的打撃により、産業は衰退し国家の危機的状況を暗示するかもしれないが、そうすることが逆に、住民一人ひとりの原発安全対策意識や防災意識を高めることになると思う。

自然災害は数年で復旧しても被曝、放射能汚染の影響は数年で収束するものではない。長崎、広島では被爆二世、三世と言われる方がいる。

原爆の後遺症の恐れは依然、続いている。

原発事故も同様である。チェルノブイリ原発事故を見ればわかる。それは自然環境や生態系を破壊し、数世代にわたって現に影響を及ぼしつつある。

 

 メルトダウンした福島の原発炉の安全宣言はいつ出されるのか?この問題ひとつとっても東電や原子力委員会は明解な回答を出していない。まだ福島原発事故は収束してないのだ。

そんな中、現政府は原子力発電再稼働へと舵を切った。

 

しかし、「絆」を断ち切るようなことをしてはいけない

福島原発事故の教訓を忘れてはならない。

 

 「天災」は避けられないが「人災」は避けられる。